エグゼクティブインタビューVol. 8-前編:株式会社システムソフト吉尾春樹社長 「新卒はIT未経験者も採用。コミュニケーション基礎力が大事」

IT業界で求める人材像とは

I:会社の指揮を執る上で、考え方の変化やターニングポイントになった事柄はありますか?

Y:社長に就いてから15〜16年経ちますが、就任したばかりの時と現在ではだいぶ考え方が変わりました。就任直後は会社をどうするかに気持ちが向いていましたが、今は会社の中にいる人たちがどうやったら力を出していけるかを一番に考えています。会社自体は当社も合併したり子会社を作ったり色々していますので、箱はどうとでもなりますが、そこにいる人は限られているので、働く人たちにどうしたら一番動いてもらえるか、その人がさらに成長を感じて部下に伝えていけるかが大事だと考えています。明確な時期や出来事があったわけではないのですが、現在の考えへと移っていった時が、ひとつのターニングポイントだと思います。

I:必要とされる人材はどういうスキルが必要でしょうか。

Y:当然我々は、大きくはIT企業なので、IT系の人材は必要ですが、ここ数年の新卒採用で何割かは文系の未経験の人を採用しています。入社後を考えてみると、実は経験者と未経験者で圧倒的な違いはありません。スピード感が違う点はもちろんありますが、長い目で見ると文系の人でもいいと感じています。むしろよく言われるような、相手の話を聞けることや、こちらの言うべきことをちゃんと伝えるというコミュニケーションの基礎がしっかりしていれば、昔と違って、今はインターネット上に色々な情報があり、技術的に足りない部分は周りが支えたりネットから情報をもらったりすれば、ある程度カバーができます。ただ、根本のコミュニケーション力や理解力はいくら周りがカバーしても本人ができなければどうにもならない。ちゃんと言われたことを自分で腹落ちするまで消化していくとか、困ったり迷ったり違うと思ったことをちゃんと伝えて相手にわかってもらえるようにできるとかの方が実は大事だと思います。こういう部分は、当社に限らずですが、どの会社・業界でも重要なスキルだと思います。もちろんIT企業だから、IT技術も身につけないといけませんが、それは後からでもできます。中途だとなかなかそうはいかない面もありますが、新卒採用はどちらかというとコミュニケーションのところを大事にしています。

I:社長も面接をされますか?

Y:新卒採用は私も面接します。中途もある役職から上は直接会います。即戦力人材の中途にあんまり僕が茶々を入れてもしょうがないので、担当部長が良いと言ったら基本的にOKとしています。

リーダーとしての資質、人材の育成の課題とは

I:社長は会社全体のリーダーですが、社員を引っ張っていく中で、リーダーとしての資質はどういったものが大事だとお考えですか?

Y:ビジョンを明確に見せて「ついてこい」と言えれば、効率の良いリーダーなれますが、私は自分があまり(その方法に)向いてないと思うので、できるだけみんなの意見を聞くようにしています。そうすると、話があっちこっち行くので、効率は悪いです。いろんなことを言ってもお互いわからなくなるので、一昨年前からは、利益率に目を向けようという話をして、去年はある程度みんなが利益率を意識するようになったので、では次にどういう分野へ行くかに意識を向けるというように、ひとつずつ進めています。本当の意味で優れたリーダーは、自分で選択して「こうしよう」とみんなに伝えて納得させていくことができると思います。我々は自分たちで一緒に考えて作っていくスタイルでずっとやってきていますし、システムソフトの伝統でもあります。そのやり方が、良いか悪いかはわからないですが、決まった時の皆の納得度は高いですよね。

I:昨今HRテック業界が出来つつありますが、その必要性はどのようにお考えですか?

Y:当社は社員の顔がわかる規模です。顔ナビを仕組みとしては導入していますが、人材というリソースをシステムで支える必要性はそこまで感じてはいません。みんなをちゃんと見ているよという公平性と、目標設定や面談をシステム経由で行うと納得性が得やすいので、その部分は利用しています。もう少し会社の規模が大きくなると全ての社員を見られないということもあるでしょうけれども、当社はギリギリまだ見える範囲ですから、両方をうまく使いながらと考えております。社員が会社の全てだと思いますので、その人たちが成長したり自分のことを考えたりすることは、何よりも最優先です。

I:社内的なコミュニケーションはある程度取れていらっしゃるということですよね。

Y:そう思っています。一部客先で作業している人とは、顔を合わせる機会がすごく少なく、コロナに見舞われる前は、時々行って夜一緒に食事をしていましたが、みんながリモートになってしまうとなかなか様子がわからない。非常に難しいなと思いますが、施策は色々とやってる方だとは思います。

I:人材の育成や管理については悩みもない状態でしょうか?

Y:どうしてもこの業界は転職がつきものなので、ある程度育ったメンバーが、やっぱり自分でやってみたいとか、友達と一緒に起業するとか、少なくはなりましたけど女性社員の場合は旦那様について行くとか。そういうことはどうしても起こり、人は必ず抜けます。その点では、常に課題だらけですね。

I:副業を承認したりなど、人材を引き止めるために何か制度などを作っていますか?

Y:副業はここ数年ずっと議論した結果、事前の届出制としました。社員は皆、真面目なので、副業も真面目にやると、おそらく休めなくなるだろうという心配はあります。平日もしっかり働いて土日もしっかり働くような人が多くなってしまうのではないかと思います。私は、若手は仕事以外にも時間を使うべきだと思いますが、副業にその時間を削ってしまうのではないかと。副業の目的は色々あるでしょうけれども、お金の問題であったら我々が良くしていかないといけないと思います。また、どうしても趣味の延長で仕事したいという人もいます。例えば、IT業界でよくあるのはゲームを作ってそのコミュニティでいろんなことやりたいという場合です。なかなか認めてあげるか難しいところではありますが、内容を聞いてYES/NOを判断するのも場当たり的ですし、今の段階では、ダメとアナウンスしています。インセンティブの設定もありますから、そういう部分で納得してくれるといいなぁと思いながらやっています。ただ、あんまりそれに寄せすぎてもいけないですし、どの会社もそうだと思いますが、人事制度の設計は非常に苦労しています。

(Vol.8-後編へ続く)

プロフィール

吉尾春樹(よしお・はるき)株式会社システムソフト代表取締役社長。1983 年 東京大学卒業後、日本電気株式会社へ入社。長期戦略立案等を担当し、1992 年7月システムソフト社へ社長付経営企画担当部長として入社。1996 年 取締役企画部長に着任し、2005 年から代表取締役社長を務める。2017 年 4月 SS Technologies株式会社取締役を兼務。

 

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