「最も重要なことは、ビジョンを描き、選択、決断すること」チームスピリット 荻島浩司社長ー前編

Teamspirit 荻島社長

リーダーはいかにしてリーダーになったのか。

リーダー自身の言葉からその理由を紐解くインタビューシリーズのVol.2では、荻島浩司氏に話を聞いた。1996年にチームスピリットの前身会社であるデジタルコースと社を立ち上げ、現在もチームスピリットの代表を務める荻島氏は、IT業界の変遷を間近に見ながら、プログラマー、営業、インディペンデントコントラクターを経て自らのビジネスを展開し現在に至る。これまでの経験からその時々の段階で感じた仕事への関わり方は、若手から要職に就くビジネスマンまで、学びと共感を得られる興味深い話ばかりだ。2回にわたり、その内容をお届けする。1回目では、過去のご経験と自社製品の開発について振り返っていただいた。

4つのフェーズから得た知見

IFLATs(以下I): 2011年から業務クラウドサービス「TeamSpirit」の提供を開始され、ご活躍なさっていらっしゃいますが、これまでのご経歴の中で得たリーダーとしての知見につながった点をお聞かせください。

荻島氏(以下O): これまでを振り返ってみますと、私には4つのフェーズがあって、それぞれから学ぶことがあり今に繋がっていると思います。一つ目は、リーダーシップというより個人の成長のためにもがいていた時期。二つ目は、独立後、インディペンデントコントラクターとして他出向き、その会社のメンバーといかに相乗効果を生み出せるかに注力した時期。三つ目は、今に繋がるSaaS(サース)のビジネスへ大きく転換した頃で、ビジョンを描きリスクを取った経験で、リーダーシップのお話に一番繋がっていく部分かと思います。そして、四つ目が現在進行形で、リーダーとして、社員みんなをエンパワーメントする重要性を痛感しているところでしょうか。

I: 4つの段階がおありだったということですが、それぞれどのようなお仕事をなさっていらっしゃる時に感じたのですか?

O: 私の経歴を大まかに申し上げますと、デザインの専門学校で学びデザイナーになり、その後IT業界へと入り、プログラマーから営業を経て、あるサービスを立ち上げ取締役を務めたのち、独立しました。インディペンデントコントラクターとして大企業に出向き、いちメンバーとして仕事をしたのち、会社を立ち上げ今に至ります。一つ目の個人の成長に注力していた時期は、IT業界へと飛び込み独立するまでの間です。何しろデザインの勉強しかしていない人間が未経験でプログラミングを始めたわけです。プログラマーから営業に転向した頃は、世の中にTCP/IPというプロトコルが出始めた頃で、ネットワークのシステムを作り事業部門を立ち上げビジネスをしていた時期で、自分自身の成長にもがいていましたね。二つ目は、インディベンデントコントラクターとして働いていた時期に当たります。それまでは会社に在籍し取締役で指示を出す立場にいましたが、顧客企業へ出向いて仕事をすると、外部の雇われ人ですし、立場としても一番下のメンバーになりました。

I: メンバーとして関わられたお仕事はどのような内容だったのですか?

O: インディペンデントコントラクーとして、大手企業の中に入って、銀行向けの契約書の管理システムや、オペレーショナルリスクのシステムを作っていました。特に前半の方は現在もメガバンクで使われているものを企画販売していました。最終的には、出向していた会社の事業部長から「自分より偉くなければどんなタイトルでも構わないよ」と言われプロデューサーという肩書で活動しました。現在地銀の頭取を務めているような方々と商談をするなど、中心的に仕事を動かせる立場でした。ポジションで言えば、一番下のメンバーなので、社員と一緒に働き製品を作っていくわけで、メンバーとしての立場で相乗効果を生み出すということを相当意識していました。すごく貴重な経験だったと思います。

リーダーとしてビジョンを描く重要性

I: リーダーシップつながるとおっしゃられた三つ目のフェイズとは?

O: その後SaaSのビジネスに展開したタイミングです。元々独立したのは、最初から自分のサービスを立ち上げたかったからです。しかしながら、生活のこともありましたし、なかなか出来ないまま、インディベンデントコントラクターの期間が10年以上経過していました。その間顧客企業の中では、私が事業計画を作り売り込み、マーケティング活動も行いと一人事業部のように働いていました。社員も6~7人抱え、順調に売り上げも得ていましたが、そろそろ本来のことをやらないといけないと考え始め、今の「TeamSpirit」という、SaaSビジネスに転向しました。2011年頭に、他の仕事を全部やめて、SaaSの開発に全てつぎ込みました。その時リーダーシップ的なことで言うと、ビジョンを描くという重要性を感じました。あとは結果としてすごいリスクをとったわけですが、自社製品に移った方がいいだろうと思い切って実行したわけです。自分が決意し選択する、ということが一番重要だと思いましたね。ビジョンを作る、リスクをとる、決意するということは学びになりました。今でもヒリヒリするので、あまり思い出したくはないですが土台になっています

I: そして現在進行形という四つ目のフェイズでは?

O: 2018年に東証マザーズへ上場したのですが、それに向けての準備や、上場後も上場企業としての体制が必要で、当然ではあるのですが、色々な面で形式的にならざるを得ないところもあります。小さな会社いわゆる大企業病に陥らないためには、自分だけがジャッジするのではなく、よくいうエンパワーメントの重要性をすごく痛感しています。ここについては現在進行形ですね。

 

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