「いかに社会にとって意義のある会社にしていくかが重要」TKP河野貴輝代表取締役社長-後編

リーダーはいかにしてリーダーになったのか。リーダー自身の言葉からその理由を紐解くエグゼクティブインタビューシリーズのVol.6では、貸会議室・フレキシブルオフィスを全国で展開する「株式会社ティーケーピー」の河野貴輝代表取締役社長に話を聞いた。2005年の創業以来、拡大路線をひた走り、貸会議室業のトップランナーとして知られるTKP。そのビジネスモデルへと結びついた会社員時代の経験や、人を育て会社を成長させる河野流采配を語っていただいた。若手にも、管理職として働く中堅ビジネスパーソンにとっても学びの多いエピソードばかりだ。前編では会社員時代からTKP創業初期までを、後編では傘下の企業との関係性や働く上で必要なスキルを尋ね、気鋭の事業家の全貌を紐解く。(Vol.6-前編「経験から逆説的に、小さく始めるビジネスモデルを生む」はコチラから

起業後の課題とビジネスモデル

IFLATs(以下、I):会社立上げ後、一緒に働くメンバーも増えて、会社も大きくなるに連れ、考え方や課題に変化はありましたか?

河野社長(以下、K):最初の壁は、人材確保とその育成でした。伊藤忠商事やイーバンク銀行の時は、いわゆるトップスクールを卒業した人ばかりの職場でした。しかしベンチャーではそういうわけにはいきません。創業当時はひたすら私が仕事を教えていくという状況で、だんだん業務を仕組み化することを考えていきました。

I:当時社員は何人でしたか?

K:最初は浜松町にオフィスがあって社員は20人。振り返ると社員が20〜30人までの規模の頃は、毎日がドラマで、ドラゴンクエスト状態。いろんな問題が起こるんです。その当時は面白かったですよ(笑)。

I:そのような中でリーダーシップはどのように発揮されていましたか?

K:誰にでも良い面と悪い面がありますが、良い面をいかに持ち上げるかがポイントではないでしょうか。創業初期にいた20人ほどの社員は個性派揃いでした。社員という枠にはめ込むのではなく、どうやったら活かせるのか、やる気スイッチはどこにあるのかを探し出すことが重要です。そして誰でも仕事が遂行できる仕組み、つまり良い仕組みを作ることです。
最初の頃は、明日賞味期限が来る150円のオレンジジュースを30円で仕入れて、今日飲む人に50円で売るというような、勝手に押したら出てくる自動販売機と同じビジネルモデルでスタートしました。「利は元にあり」。これが僕の最初のポイントで、とにかく安く仕入れた。訳あり物件を安く仕入れているから安く時間貸しできる。そこに誰が売っても売れるマニュアルを作り、制服を用意して、どんな人でもちゃんと仕事ができるように仕立て上げたのが最初です。

ビジネスが拡大したきっかけ

I:その後、初期のビジネスモデルから飛躍した転機とは?

K:最初はひと月50万円の売上からスタート。1億円超えて、2億円超えて、好調が続きました。しかしリーマンショックで一気に売上が落ちました。ひと月4億円の売上が4ヶ月後に1億円になりましたから。1億円の赤字が出て、その3ヶ月間は地獄でした。なんとか乗り越えましたが、単純に安く仕入れた部屋を貸すというビジネルモデルだけでは、やはり1次曲線です。利は元にありですから、付加価値がつきません。
ビジネスモデルに変化が訪れたのは、2011年3月の東日本大震災の後です。震災でホテルやイベントホールが使われなくなり、そのタイミングでホテルの宴会場ビジネスの再生に着手しました。ホテルの宴会場を仕入れ、その厨房を使って料理を作り、貸会議室にケータリングします。そうすると一人1時間100円で貸していた会議室が、一人5000円の宴会場に代わるわけです。このように付加価値をつけることで客単価が上がり、業績が急拡大しました。その後アパホテルのFCやリゾートホテルをはじめ、2019年には日本リージャス社、台湾リージャス社を買収しました。

人材育成を担う”河野塾”とは

I:規模が大きくなるとリーダーシップも最前線まで行き届かないこともあると思いますが、方法は変わっていきましたか?

K:現在はスタッフ含め約1,600人の従業員が在籍しております。コロナが拡大する前は、3ヶ月に1回、全社員を集めて生中継でイベントをして、フォローアップで動画を共有していました。

I:社長から直接ではなく、イズムを伝える中間的な社員の方もいらっしゃいますか?

K:2010年から、社内で河野塾という塾を開催しております。毎回20~30人を対象にしています。希望する人の中で試験をして、私が将来有望だと思う人を選抜しています。今も上層部で活躍している人は、河野塾の卒業生が多いですね。

I:塾生の方は、新卒から入社した方々が多いですか?

K:新卒は毎年80人ほど採用していて、新卒からも入塾しています。河野塾では半分が勉強。ドラッカーの原文を読んだり、私がお願いした講師の方のお話を伺ったりしています。伊藤忠商事の社長だった小林栄三さんに来ていただいたこともありました。
河野塾の卒業時には海外研修へ行くこともありました。香港にTKPの拠点があった頃は、香港の大手旅行会社のEGL、野村證券(香港)、伊藤忠商事(香港)などの社長の方々にお話をいただいたり、会社訪問をしたり非常に有意義な会でしたね。

I:河野さん自身が、今後目指すところはどういったところでしょうか?

K:コロナの職域ワクチン接種会場の運営や、サッカーの大分トリニータの経営参画など、社会的なことにも力を入れています。自社のことだけでなく、社会の中の会社であるという位置付けで、TKPをいかに社会にとって意義のある会社にしていくかが重要だと考えております。
人生100年時代と言われて先も長いですから、バランスが一番大事ですね。バランス的成長、拡大均衡です。HISの澤田秀雄さんにも指摘されました。「河野は急成長しているけど、急成長は死を意味する。急成長は急降下でもある」と。

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