「サッカーに学んだ組織のバランス維持」ZUU 冨田和成社長 ー前編

リーダーはいかにしてリーダーになったのか。リーダー自身の言葉からその理由を紐解くインタビューシリーズのVol.5では、冨田和成氏に話を聞いた。学生時代の起業や証券会社への就職、そして30歳で「ZUU」を創業し上場企業へと着実な成功を収めてきた冨田氏は、猛烈な集中力とインプットで課題を突破し続けてきた没頭型。ビジネスパーソンが常日頃考え向き合う、目標へいかに辿り着くべきかを、冨田氏はサッカーをベースとした成功体験から導き出し今に至る。前編ではサッカーを通じた原体験を、後編では社員へも語り続けているというメソッドについてお聞かせいただいた。

全てのベースとなるサッカー

IFLATs(以下 I):現在のポジションに就くまでや考えに至るまで、学生時代を含め一番のターニングポイントになった経験とは?

冨田氏(以下 T):私の人生のベースにはサッカーがあります。浪人していた1年を除いて、小学校3年生から大学までずっとサッカーをやっていました。一つのこと以外考えられない猪突猛進タイプなので、本気でプロになりたいと思っていましたし、その後は今に至るまでビジネスに夢中に。浪人の1年間は一切ボールに触れずに、それまでサッカーに向けていた気持ちを全て勉強に注ぎました。偏差値35から一橋大学を目指して、半分ゲーム感覚、半分自分の実験として受験勉強だけをひたすらやりまして合格しました。考え方という点では、一つのターニングポイントがあったというよりは、サッカーを通じて経験したことが私自身の人間形成や考え方の根底にずっとあります。

I:サッカーから学んだ1番のことはなんですか?

T:すごくベタですけど、一人ではできないということ。そして、私なりの考えなんですけど、サッカーは他の競技に比べ、いざ試合が始まったらある程度はチームメンバーに委ねられます。もちろん監督は指示も出すし作戦も考えますし、選手交代の采配もしますが試合の仕組みづくりまで。試合中はそんなに細かい指示は届かないので、メンバー自身で修正していかないといけないんですよね。このみんなで調整しあっていく部分は、すごく今の時代に合ってるなと思いますね。
野球などは試合中に監督がサインを送ったりもしますし、監督の権限がもっと強いと思います。サッカーは11人でプレーするので個の力だけでは勝てないんですよね。チームワークが成せるところがあって、それが大どんでん返しのミラクルを起こしたりします。私が中学生ぐらいの時に、マイアミの奇跡と呼ばれる、オリンピックでブラジル代表に1対0で勝つということがありました。川口能活選手、中田英寿選手、前園真聖選手らが、11人全員で徹底して守り、戦術が全てハマった。ここは、すごく面白いところだと思います。
私はずっとゴールキーパーをやっていたんですが、小学生の時のコーチに「一番いいことは、お前が活躍しないことなんだぞ」と言われまして、その通りなんですね。自分が動く時はチームがピンチの時なので。これは、会社組織にも当てはまると思うんです。管理部門は活躍しない方がいい。守りの部門が活躍するということは色々問題が起こりまくってるということになります。弊社の管理部門ともよくそんな話をします。そして会社はみんなが動いてこそなんぼです。皆に寄り添って合わせたり、どう動かすかを考えたり、そのバランスをどう維持するのかという点は、サッカーを通じて学んだことですね。

I:「バランスの維持」は、いつ頃から意識していたことですか?

T:大学時代ですね。大学では主将もやっていて、超トップダウンのマネジメントスタイルを、しかもストイックにやっていました。自分の指示を全員に強要するというか。もちろんチームを良くしたいがためにやっていましたが、その方法では11人の力が最大化されず結果が出なかった。その時に、ピッチ後方から「皆が攻めている時にカウンターがきたらどういうことが起こるか。左サイドでやり合ってる時に、右サイドではどういうことが起きているか」や、逆に「皆が守っている時に攻めに転じたらどんなチャンスがあるんだろう、どう指示を出してみんなを動かしたら勝利へ繋がるか」といったことを、それまで以上に試合中に考えるようになりまして、チームや組織をバランスを見ながら動かすことを体得していったと思います。

サッカーからビジネスの世界へ一気に舵切り

I:大学時代には、起業もなさっていますね。どんなきっかけがありましたか?

T:私がビジネスの世界にハマり出したのは、就活セミナーでソフトバンクの方が大学にいらした時のお話に興味を持ってからでした。「今後携帯を無料にしていく」というような事を話していました。当時はアーリーアダブターとかイノベーターと言われる人々がようやくスカイプを使い始めたレベルだったので、携帯が無料になるってどういうことなのか、ビジネスの世界ではそんなことが可能になるのかとすごく衝撃を受けたんです。その時に、それまでサッカーの分野で世界のフィールドで戦って熱狂させたいと思っていた気持ちが、ビジネスの世界に一気に向きました。私は大学2年の時にプログラミングの授業を受けて面白いなと感じていたこともあり、ITへの興味が自然と湧いていきました。

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