リーダーシップインタビューVol.5-1:冨田和成氏 「サッカーに学んだ組織のバランス維持」

I:冨田さんが没頭型であるというのは、幼少期含めて何かきっかけがあったんですか?

T:ことあるごとに母から「全力でやることは素晴らしいことで、全力でやってできないことなんてないんだよ」と言われていました。子供の頃「これ無理だよー」と言えば、「無理なんてことはないの!」と、その時だけすごい剣幕でめちゃくちゃ叱られていました。普段叱られることはあまりなかったんですが。それからだんだんと全力でやりきれば結果が出せるんだなということを体験して、ミラクルを何度も起こしてきたから、自然とその考えが血となり肉となり、自分自身に染み付いていったんですよね。ただ、以前この話をした取材記事が出て、母に「ありがとうね」と言ったら「私そんなこと言ったかしら?」と記憶にないようで(笑)。母も意図的だったわけではなく、がむしゃらな子育ての中で私に伝えていたことを、私が自然と身につけていたようです。

I:大学時代に、ビジネスに本格的に興味を持った後は、どんなステップを踏んで起業までたどり着いたんですか?

T:その後、就活の時にソフトバンクを受けました。ありがたいことに興味を持っていただきました。いわゆる就活生の囲い込みのようなコミュニケーションがあり、毎週汐留のビルに通いました。そこでは孫社長のビデオをみたり、本を読んだりして、”孫イズム“を叩き込まれまして。純朴な学生だったので、ものの見事に感化されて、気づいた時には、「自分も事業をやるに決まってるじゃん」という考えになっていました。学生でしたがソーシャルマーケティング広告を事業とする会社を立ち上げるに至りました。自分自身がサッカーでずっと考えていた世界がビジネスの世界に切り替わったのが、このタイミングでした。四六時中サッカーのことしか考えていなかった子がビジネスの世界にはまっちゃうと、今度は四六時中ビジネスのことしか考えないようになりました。

大学卒業後に金融の世界へ飛び込んだ理由

I:その後、大学卒業後は新卒で野村證券の社員になられます。一度就職なさった理由は?

T:野村證券へ入社するという進路を選んだのは、金融の世界にどっぷり浸かった経営者がそんなに多くはないと、当時考えたからです。

I:金融の世界を知ることが重要と考えたわけですね。

T:学生起業家として、それなりにビジネスを拡大させたり色々な取引をするようになったりすると、様々な経営者の方と会う機会が増えました。経営者の方が3名ほど口々に「財務と法務は経営者が弱いところだね」と仰って。財務や経理、ファイナンス、資金調達など、表現はそれぞれでしたが、つまりはお金に関することです。私は経済学部に在籍していましたし、法務は自分のエリアではないですが、財務の部分は私自身が関われる部分なのではないかと、ふと思いました。当時事業を面白いと思ってはいましたが、さらに財務という領域を強みにできたら、もっとすごく面白くなるんじゃないかと。加えて、厳しい環境に没頭してやりまくると必ず成長できたという原体験があったので、野村證券は非常に厳しい会社だと聞いたし自分自身を伸ばしてくれるだろうし、性にも合ってそうだと。その2つが野村證券へ就職した決め手でしたね。

I:入社されて、営業でトップ成績を収められています。上司など誰かに教えてもらうというより、自分で色々な方法を見つけ出して動かれていたのでしょうか?

T:いろんな方達にご教授いただいて成長してきました。拙書の「鬼速PDCA」(クロスメディア・パブリッシング刊)にも書いていますが、壁にぶつかった時や課題に遭遇したら、誰に教えてもらったらインプットが早いだろうか、自分自身のレベルが上がるだろうか、何の書籍からリサーチしたら自分自身のレベルが上がるだろうか、というようなことを逆算します。そしてその分野について大量に一気にインプットして強くなる、ということを実践していました。入社2~3年目には、国内リテール部門という個人向け部門で、急成長していたベンチャー企業のエクイティ・ストーリーやファイナンス、M&Aのお手伝いをするまでに成長できました。

圧倒的に即時にインプットし成長続ける営業マン時代

I:一気に大量のインプットをしてその分野に強くなるというのは、実際に業務に当たる中で、自然と見出した方法ですか?

T:そうですね。課題という機会に飲み込まれながら大量にインプットをし、担当している取引先に貢献できると、「こんなに頼ってもらっているのだから」と思うと、ますます彼らに対して「絶対に価値貢献したい!」という気持ちになっていきます。難しいお題を投げられたら余計に徹底して。以前、ある杉並の企業の社長さんには「どこの金融機関に問い合わせても答えてもらえなかったことを、冨田さんに聞いたら、翌朝にはかなり深いリサーチに基づいて答えてくれる。本当にお世話になった」というありがたいお言葉をいただいたこともあります。

I:翌朝とはものすごいスピード感ですね。リサーチはどのようになさっていたんですか?

T:課題を投げられたら、その日の夜に専門書のような分厚い書籍を3冊ぐらい手にとって朝まで読み込んだり、少ないネットワークですが他の会社のアナリストやデリバティブ責任者に連絡したり。そうして翌朝にお返事を差し上げるということをやり続けました。高いレベルの経営者にいろいろ教わり、より深い話を聞けるようになって、皆さんによって育てられました。無茶苦茶高いレベルの経営者の方々の世界を垣間見ることで、かなり早いタイミングで勝手に視座が上がっていきました。私がご一緒した後、上場された社長さんもたくさんいますし、そういう中に入れたことが一番の直接的な学びでしたね。当たり前の目線がとても高かったということが、野村證券で得た何よりの価値だったと思います。

(Vol.5-2へ続く)

プロフィール

冨田和成(とみた・かずまさ):ZUU 代表取締役社長/1982年生まれ。一橋大学在学中に起業し、2006年野村證券に就職。営業部門で好成績を収め本社のプライベートバンク部門などに勤務。2012年にIT×金融によるコンサルティング事業や富裕層向け金融情報サイトを運営する「ZUU」を設立。2018年には東証マザーズへ上場するなど大きな注目を集めている。『鬼速 PDCA』ほか著書も多数。健康維持は毎週末のランニング。今はオーディブルで最新テクノロジーの本を聞きながら、1キロを5分半で走る。気分転換は好きな海が見える場所で仕事をすること。

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