「リーダーシップには欠かせない、3つのS」チームスピリット 荻島浩司社長-後編
リーダーはいかにしてリーダーになったのか。
リーダー自身の言葉からその理由を紐解くインタビューシリーズのVol.2では、荻島浩司氏に話を聞いた。現在2011年に株式会社チームスピリットの主力サービスである「TeamSpirit」を立ち上げ代表を務める荻島氏は、IT業界の変遷を間近に見ながら、プログラマー、営業、インディペンデントコントラクターを経て自らのビジネスを展開し現在に至る。これまでの経験からその時々の段階で感じた仕事への関わり方には、若手から要職に就くビジネスマンまで、学びと共感を得られる興味深い話ばかりだ。2回にわたり、その内容をお届けする。2回目では、荻島氏が考えるリーダーシップのスキルについて伺う。
(第1回「リーダーとして最も重要なことは、ビジョンを描き、選択、決断すること」はコチラから)
本から気づきを得た、大切にしてきたポリシー
IFLATs(以下、I) :座右の銘はお持ちですか?
荻島氏(以下、O):誰かの言葉ではないのですが、「未知を自覚して、冒険を楽しむ」ことをポリシーとしています。そして経営は、3つのS、センス(sense)とソウル(soul)とサイエンス(science)が重要だと思います。しかもこの順番が大切です。
I: ポリシーについては、若い頃から大切になさってきたことですか?
O:『ブラックスワン』(ナシーム・ニコラス・タレブ著)という本の中に「宇宙のことや世の中のことに知識があると思っているけれど、多分知っていることは、この世の中全ての1%もないだろう」というような逸話が出てきます。それを読んだ時にハッとしたというか、まだまだ未知の世界があることに救われました。例えば外国について、現代はインターネットで地図から何から見ることができて、わかった気になっていますが、知らないことの方がどれほど多いか。一番知識を持っている人や企業であったとしても、それはせいぜい1%ぐらいでしかなくて、未知の領域が大きく広がっているとすれば、やれることはいっぱいあるじゃないですか。それにとても勇気づけられ、自分なりのポリシーに繋がりました。
経営に必要な「3つのS」
I: 3つのSについて詳しくお聞かせください。
O: センスとソウルとサイエンスということで言うと、サイエンスは世の中にいっぱい教えてくれる場があります。学校でMBAも取れますし。それでも多くの企業が行き詰まる理由は、常に世の中や過去を分析したりすることからスタートするからではないかと思います。過去の延長線上に未来を描くのではなくて、最初にビジョンを描けるセンスが必要で、ビジョンに向かって絶対にたどり着くと言う覚悟、魂(ソウル)が必要だと思います。GAFAと呼ばれるアップルやアマゾン、それからテスラにしても、過去を分析し、こうやったら成功するだろうとサービスを考えたことはないと思います。まず理想を自分で描き、それを常に考え未来を見ていたはず。センスとソウルが先にあり、それを実現しようとした時、猪突猛進でやってもうまくいかないので、きちんとしたサイエンスが必要。その順序だと思いますね。
影響を受けた書籍
I: 社長が影響を受けた人物はどなたかいらっしゃいますか?
O: そういう意味で言うと本から一番影響を受けていると思いますが、事業家として影響を受けたといえばなんといってもスティーブ・ジョブズですね。アップルを作ったというより、彼の生き方や、スタンフォード大学でのスピーチにもかなり影響を受けました。そしてもう一人は、ジェフ・ベゾス。アマゾンはあれだけのIT企業なのに、自分たちは顧客サービス企業だと言い、常にDAY1を意識しており、事業を行う者として影響を受けています。
I: 本からの影響が大きいということですが、いくつか考え方の軸になった書物を教えてください。
O: これから申し上げる4冊は特に影響を受けた本です。
『トム・ピーターズの経営破壊』(トム・ピーターズ著)
この世界に飛び込んだきっかけの本でもあります。物事を上から見たり裏から見たり、色々な見方ができると気づかせてくれました。例えば、売り上げの話でも、企業は当然株主に対して価値を高めなければいけないし、利益がなければ存続できないので、それを目標に売り上げを上げるのが一般的な考え方だとは思います。しかしそんなことはさて置き、極端な話、お客様にとっての価値のためには無償にするとか、サブスクリプションのように低価格にすることもあるかもしれません。それは前半の売り上げをアップさせる話と矛盾するわけですよ。だけど、結果として条件である利益を大きくすることに繋がります。このような、なかなか一般的に結びつかないことを面白可笑しく教えてくれた一冊です。
『イノベーションと企業家精神』(P.F. ドラッカー著)
トム・ピーターズの著作についてお話したことを、さらに理路整然と色々な事例を交えて、納得性を持って教えてくれた本です。表現は違いますが『経営破壊』と同じことを言っていまして、前者は漫画に近い形でとっつき易く読めます。ドラッカーは、それを仕組みとして体系的に教えてくれました。写経ではないですが、頭から最後までワープロで全部打ち込みました。そのくらい影響を受けました。
『ハイアウトプットマネジメント』(アンドリュー・S・グローブ)
最近になってすごく役に立つと思っている本で、弊社でも必読書としています。マネジメントについてとても分かりやすく教えてくれています。茹で卵の工場を例に、最適に作るためにどのようにしたらいいか、意思決定やマネージャーの役割などを解説しています。我々は、マネジメントができるプレイヤーを求めていたけれど、そうではなく、マネージャーというのは、メンバーの力の層をそれ以上にすること。例えば5人いたら5ではなく10の力にすることがマネージャーの役割である、というようなアウトプットの仕方をわかりやすく説明してくれる本です。
『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)
多くの方がご存知の1冊だと思います。とても参考になりますし、TeamSpiritはかなり影響を受けています。自分自身を高める部分と、人のやる気を引き出す時に、7つの段階があり、win-winの関係で相乗効果を作るという点について、ステップに応じ解説されています。また、第三の習慣とされている「最優先事項を優先する」はとても大切だと考えています。これは有名な”アイゼンハワーマトリックス”という緊急と重要のマトリックスについて触れている部分です。世の中の人は大抵緊急で重要なことで動いているけど、実は緊急でも重要ではないこともある。例えば、電話がかかってきたり、急にやらねばならないことが発生したりといった部分を減らすことが大切なんですよね。反対に、緊急じゃないけど重要なことこそが、やらなければいけないこと。つまり付加価値を生み出すことです。付加価値をつける機能を我々の製品にも加えたいと常々思っていますし、その面でも影響を受けています。