エグゼクティブインタビューVol. 8-後編:株式会社システムソフト吉尾春樹社長 「今日よりも明日、1mmでも前へ進んでいたい」

必須のソーシャルスキルは、コミュニケーション力

I:私どもが調査・研究している、ソーシャルスキルについてもお聞きしたいと思います。社会生活の基礎となる15のソーシャルスキルの中で、IT業界において、大事なスキルはどういったものか、お聞かせください。

Y:そうですね、「共感力」と「創造的思考力」。要するに、聞く力と伝える力です。あらゆる業界で必要ですが、特に、ITの場合はお客様と自分たちの間で、専門スキルに差があります。こちらは技術を分かっていて、お客様はそれをわからない場合がある。逆に、アウトプットに対するイメージはお客様が高くて、こちらが低い状態から始まります。この2つのアンバランスをコミュニケーションでもって繋ぎ、満足できるプロダクトを作るのが仕事です。相手の言っていることをわかろうとすることと、こっちが考えていることを伝える力はとても大事です。どの業界でも同じでしょうけれども、ITは実はそこが一番大事だと思っています。技術は周りのサポートなど色々手当できますが、何を作るかをお互いに納得して進めていく部分は技術ではなくてコミュニケーションです。そこで正しい方向を向くことができていれば、システムはすでに9割できているようなものです。あとは、時間とマンパワーをなんとかしていく話です。「感情の波をコントロールする能力」「対人関係の構築と維持能力」「ストレス、不安や緊張に対処する能力」などは全てコミュニケーション力を支えるためのものなのかなと思います。それらを中心に15個どれもが大事ですね。実現しなきゃいけないから、実行力もいるでしょうし、創造的な考え方も必要です。

I:ITは知識であって、共感力やコミュニケーション力のウエイトが大きいから文系でもやっていけるわけですね。

Y:そうですね。コミュニケーション力は、その人の元々持っている力がある割合を占めるように思います。コミュニケーションが上手な人は、どういう時でも上手です。少しはトレーニングで良くなりますが、圧倒的によくなるということではないように感じます。専門スキルやビジネススキルはトレーニングで鍛えられるでしょうけれども、ソーシャルスキルはトレーニングではなかなか鍛えにくいものだと思います。

I:経験値でしょうか?

Y:経験や、チームである程度サポートできるとは思いますが、「ストレス耐性をあげましょう」と言っても、どうやって上げるかは実はわからないですよね。

I:業績はあまり伸びないけれども、すごく共感力が高い社員の場合、評価方法はありますか?

Y:現場クラスの担当者であれば、基本的には今おっしゃられたようなことは、長い目では起こらないはずです。共感力やコミュニケーション力のある人は、必ず実績をあげていけると思います。ただし、瞬間風速では起きる話なので、それについては本人の希望も聞きながらポジションチェンジしていくしかないですね。部長など上のクラスの管理職だったら、結果の方がウエイト高いので、当然評価は下がります。逆にそれ以下の階層では、上司がその状態を放置していたということですから、その社員が悪いというよりも、上に責任があるという考え方です。

I:最近話題に上ることも多い「自己認識力」というスキルについては、どのように考えますか?

Y:自己を認識しているかどうかも「共感力」と「創造的思考力」に出てくると思います。相手とコミュニケーションするときに、ある基準で話していて、相手を理解するとかしないとかの意味でも自己認識力は必要になります。加えて、自分の希望や嫌いな点を仕事の場で出すか出さないかは、コミュニケーションの問題だと思います。単純に自分は粘り強いとか、おっちょこちょいだと話をされても、それは自分の中での長所と捉えたり課題と捉えて克服したり、という話になります。当社も採用試験で、自分の性格なども書かせますが、私はそれよりも、むしろコミュニケーションを取るときのベースがしっかりしているかどうかを重視しています。

(Vol.8-後編 終了)

プロフィール

吉尾春樹(よしお・はるき)株式売社システムソフト代表取締役社長。1983 年 東京大学卒業後、日本電気株式会社へ入社。長期戦略立案等を担当し、1992 年7月システムソフト社へ社長付経営企画担当部長として入社。1996 年 取締役企画部長に着任し、2005 年から代表取締役社長を務める。2017 年 4月 SS Technologies株式会社取締役を兼務。

 

 

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