「経営者としての礎を築いた父の道標」エスクリ 渋谷守浩代表取締役 ー前編

異動を叶えるために、売り上げトップを宣言

I: ご自身の会社にはいつ頃戻られたんですか?

S: 専門学校を卒業してから、親父の経営している会社に戻りました。

I: 渋谷では、どのような仕事を経験されましたか?

S: 渋谷帰ったときに、またしても親父の罠にハマりました。渋谷には、製材や木材といった建築の材料を売る部隊がありますは会社に戻って、てっきり建築の仕事をする思っていましたが、親父はなんとを木材部所属にしました。せっかく建築と土木の勉強して帰ってきたのに、木を売れ。なんで?ってなるじゃないですか。だけど、親父は「お前は社員だから、社長のいうとおりにせぇ。質問もするな」と。当時は木の障子やドアの需要もまだまだあり、建具材をメインに販売していた部署でした。営業ではトラック1台で木を売りにいくわけですよ。渋谷は、木曽の檜をメインに売っていましたから、朝4時に起きて長野県までトラックを運転して、同僚と手積みして、夜の910時に奈良に戻ってきます。日帰りで。は早く建築の仕事がしたいから父に部署を変えてくれと頼んだら、「木材部の中でトップの売り上げになったら建設部に異動させてあげてもよい」と言われました。当時は木材部の方が売り上げも大きかったのですが、私は建築を伸ばしていかないと未来はないと思っていたので、自分が早く建築部門を成長させたいと思っていました。その時は、渋谷木材工業という社名で、専務も番頭も木材部所属でしたから、この2人の成績を抜くのは大変でした。なんとか木材部から出るために頑張ろうと、「1人で1億円売る」と宣言して見事に1500万をその年に達成しました。そこから渋谷社の中でのドリームストーリーが始まり自分なりに建設部を思い切り改革していく事となりました。

M&Aを決断

I: M&Aはどういう経緯で?

S: M&Aの考えでした。45の頃、そろそろ次を見ないといけないと思うようになりましたには娘が三人いますが、彼女たちが建設会社の渋谷を継ぐイメージが湧きませんでした。神様がに娘三人を与えてくれたことは、自分の人生の中で違う世界を見た方がいいと言うメッセージだと勝手に解釈したんです。それともう一つ。渋谷は、創業以来114年間、一度も赤字を出したことがなく与信は非常にいいし、事業売却をした頃の売り上げも50~60億円ほど。周りからは、歴史ある地元の優良企業がなんで?と言われたものです。ですが、私は「地元で」終わることが嫌で大海を見に行くにはM&Aが一つの手段として悪くはないと考えたからです。

I: エスクリとのM&Aをすると決めたのは、どのような経緯があったのですか?

S: エスクリが東証1部上場したての、渋谷の東京営業所内装工事を受注していました。そんな中でエスクリ創業者の岩本博と出会い、一緒にやらないかと誘われました。彼は、早稲田大学を出てリクルート出身のエリート。リクルートで「ゼクシィ」という雑誌を立ち上げた営業メンバーで、都市型のビルイン結婚式のビジネスモデルを考えついてここまで拡大してきた。私の憧れる全く違う成功者です。歳も1つしか違わないので意気投合しましたし、岩本も人たらしで「は株式会社渋谷という会社よりも、渋谷守浩という男が欲しい」と。彼は彼で勉強も頑張ってきたし会社も作ったけど、本当の経営はよくわからないし、100年も会社を続かせる血は自分には流れてないと。お互いの求めてるところがピタッと合ってしまって、ウエディングなんて考えたこともなかったけど、の経営力を魅力に思ってもらえるならと、2人で酒を飲みながら「じゃあやるか」と決めました

I: 特に迷いなどは生じませんでしたか

S: これも親父の言いつけですが「商いは、野菜も魚も、家売るのも車売るのもなんでも3分以内に売れるようにならなあかん。基本のキは全部一緒で、業種は関係ない。経営者は経営者であればいい」と言われていました。さらに、「経営者は、数字に強い者と営業に強い者の二つのタイプに分かれて、お前は営業に強いから、営業の強い経営でやれ。だから管理畑には優秀な者を雇えばいい」と言われていました。商売するものがウエディングになっても、それは特に不安材料はなかったですね。それよりも、上場企業で自分の経営力がどこまで通用するか私自身が知りたい気持ちの方が強くなってました。当時45で、その後1520年とどこまで通用するか、今やらないと間に合わないという気持ちもありました。ものの数ヶ月で決断し、決めるとそこは田舎者のボンボン育ちだから、会社を高く売ろうという考えもなくてメインバンクにも処理のチェックだけ。相手のファーストコンタクトの額でいいと言う人は珍しいと、驚かれました。普通はここから値上げ交渉しますよ」と言われましたが、は時間の無駄だと思いました。軌道に乗ればいくらでも稼げるわけですから。本当に実力があれば、あとから自社株買いもできるだろうし。逆に価値があるように風呂敷広げたりずるいこと考えたりするよりも、神様だってきちんと行いを見ているだろうから、潔い方が自分にもチャンスが戻ってくるだろう

(Vol.7-後編へ続く)

プロフィール

渋谷守浩(しぶたに・もりひろ):奈良県桜井市出身。1987年修成建設専門学校卒。社外での経験を積み、家業の株式会社渋谷へ。2013年渋谷をエスクリへ売却し、同社執行役員、取締役を経て2016年からエスクリグループの全事業トップを務める。

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