「自己認識力はすべてのビジネスマンにとって大事な能力」日本M&Aセンター 三宅卓社長ー後編
あと、自己認識力。全てのビジネスマンにとって大事な能力です。欠点を理解すると欠点でなくなる。欠点を理解していないから欠点であって、欠点はちゃんと意識すべきだと思います。自分の能力、得意技、不得手技、長所、短所、これを客観的に知っておくことです。例えば、しゃべるのが苦手ならプレゼンテーション資料を工夫しよう、あるいは誰か代わりにしゃべってもらう、とか。下手なのを知らずにプレゼンテーションするからすべてのビジネスを壊してしまう。ビジネスマンはビジネスというフィールドで自己認識をきちっとする。できないものはできないですから、きっちり素直に認めて対応策を作っていくのがビジネスです。
そういう意識を持って、僕はチームビルドをやっています。座標を書いて、そこに能力を描いていく。「創造的思考、イノベーションする力」、「能力と人望、リーダーシップ、業績をコミットメント通りに作れる業績能力」、それから「本当に細かいところまで注意できる能力を示すマイクロマネジメント能力」とかを描いていきます。「想像力はあるけれど人望がない」とか「人望はあるけれど細かいことは苦手や」とか、人によってそれぞれに、No.2、右腕、左腕をどう付けたらいいかを考えて、チームビルディングしていきます。サポートをつけたり、仕事のやり方を工夫していけば、いいチームビルドができていきます。これは部長級に教えています。
僕が見るに「ちゃんと業績は上がってマイクロマネジメントはできているけど、イノベーションできてない」「人望はまあまあ」「ここが弱いからどうする?」「部下でこれができるのは誰?」「部下でいなかったら上司では誰?」「じゃあ、その人ともっと話をして、コレをこっちへ持って行けよ」とか、そういう話をするツールとして使っています。
I:社長ご自身で経験されてきたことをご自身で伝えることに力をいれていらっしゃいますよね。
M:こう(絵を描いたり)すると、みんなが腹に落ちるわけなんですよ。
I:最近はセミナーも含めて外で学ぶ人も多いと思いますが、説得力をお持ちの理由はどこにあると思われますか?
M:テンプレートを使うことも悪くはないのですが、そのテンプレートが自分のものになっているかどうかですね。借り物ではダメで、テンプレートを使うのであれば、本当にそのテンプレートの使い方を考え抜いて使っていくことが大事です。テンプレートは道具なので、道具だけ与えられても使い方を知らなければ上手にはできないですよね。
相手の耳と目を支配する
I:最後に余談ですが、インタビューさせていただいて、社長のお声が大きいのも武器だなと思いました。
M:声、というか話し方については私も考えておりまして、セミナーや講演会では、どのあたりまでしっかり声が届いているか事前に会場で必ず確認しています。
営業のポイントでもあるのですが、営業は相手の目と耳を支配すれば勝ちです。
たとえば、映画館に行くと大きな音と大きなスクリーンがある。その環境にお客さんが身を置くと耳と目を支配されて、映画に感動したり、驚きを受けたりする、つまり映画が伝えたいことをしっかりお客さんは認識します。
私も営業時代にずいぶんやりましたが、ある会社の社長に営業に行ったとき、通常は対面に座るものですが、私は「社長、ちょっと横に行って説明させてもらっていいですか」と。社長の横に座って企画書をひろげ、社長に近いところで説明を始めるわけです。そうすると社長は目の前の企画書に集中するし、耳は近いところでこの声で説明することになるので、目と耳を支配した状態になる。それで営業がうまくいく。
大事なのは、ウォームハートとクールヘッド。冷静な分析力とコミュニケーション力。これがあればビジネスはうまくいきます。
(Vol.3-2完)
プロフィール
三宅卓氏:1977年日本オリベッティ株式会社入社。分林保弘氏(日本M&A センター現会長)とともに会計事務所へのプロジェクトを担当した後、金融機関への「融資支援」や「国際業務」 のシステムの企画・販売を担当。このときの人脈が日本M&Aセンター金融機関ネットワークの素地となっている。「日本を支えるトップ営業マン」としてビジネス誌に紹介。1991年株式会社日本M&Aセンター設立に参画。中小企業M&A の第一人者として同社を牽引。数百件の M&A 成約に関わって陣頭指揮を執った経験から、「中小企業 M&A のノウハウ」を確立し、品質向上と効率化を実現。上場時には営業本部を牽引し、大幅な業績アップを実現して上場に貢献。2008年代表取締役社長就任。中堅中小企業のM&A を支援するリーディングカンパニーのトップとして、 TV・新聞をはじめとするさまざまなメディアで取り上げられる。