「自己認識力はすべてのビジネスマンにとって大事な能力」日本M&Aセンター 三宅卓社長ー後編
座右の銘は「石もて石を自らの偶像に」
I:社長のポリシー、座右の銘などはありますか?
M:ポリシーはふたつあります。一つは、「リーダーは実現力」。みんな頭がいいので少し本を読んだら何とでも話せますが、われわれはコンサルタントではなくビジネスマンですから、ビジョンをもって、実行して、最後に実現する。実現力が大切です。
もう一つは「イノベーションする」こと。座右の銘は「石もて石を自らの偶像に」というのですが、自分が作ってきたものを自分でぶち壊す、常に、というのが大事かなと思っています。「常にイノベーションしていく」、その姿勢がないと会社が止まってしまいます。
論理、ロジックと感性やEQ(Emotional Intelligence Quotient、心の知能指数)のように、できるだけ左右の振れ幅を大きくすることを意識しています。ロジカルな面も大きくするし、感性の部分も大切にする。振り幅を大きくしつつ、(対極のセットをいくつも持って)いろいろな方向に振らせることが、人間としての器、ビジネスマンとしての幅を大きくすると思っています。少なくとも、僕の生き方、僕が親しい人には、両方にちゃんと振れるセットを可能な限りいっぱい持とうよと勧めています。
I:IFLATsでは、様々なことに対処するための基礎スキルとしてソーシャルスキルを15個選定しています。ビジネスマンにとって必要な能力という視点で、この15個のスキルをご覧になられていかがでしょうか?
M:全部大事ですよね。
継続力。続かない人はまずビジネスマンとして難しい。
状況適応力も大事です、その前に状況把握力が大事ですが。状況を把握して適応していく。そして実行力。先に話したように、実行して、実現することが大事です。実現力が一番重要ですが、その前に実行できないとダメなので。ただ実行するだけでもダメで、ビジョンを掲げて実行して実現する、もう一歩深さが必要です。
それから共感する能力。私はウォームハートと呼んでいますが、要はコミュニケーション能力ですね。こちらから表現し、相手から聞くというコミュニケーション力は非常に大事です。これがあれば対人関係の構築と維持は当然できるし、効果的なコミュニケーションもできるはずです。
あと、感情の波をコントロールする能力。大きすぎる波はダメだけど、小さな波は表現してもいいのではないかと。リーダーシップをとるには鉄面皮ではだめで、喜びとか怒りとかを割と素直に分かった方が人間味があって人はついてくるんじゃないか、と思います。スキンシップも大事で、出かけの営業マンがおったら「おまえ、どこへ行くんや?」「これから茨木です」「頑張れよ。寒いからな」とパーンと肩をたたいてやるような。拍手することとかも大切、と思っていいます。
自己回復力。いつも社員に言っていますが、頭と心と体を平等に疲れさせることが大事です。特にホワイトカラーは気持ちや頭だけ疲れるから、夜、寝られない。当たり前やないかと。1時間走るか、プールで泳いで、ビール2本飲んで、それでも眠れないなら、病気やから医者に行かなという話で。
僕は毎朝プールへ行きます。ブレックファーストミーティングの時以外は。そうすると夜、眠くなりますよ。体と心と頭。心も使わなあかん。きれいな音楽を聴いて寝るとか。要はバランスです。
探求する力、これも重要。凝り性というのが、ビジネスマンにとって大事かな、と思っています。凝り性でない人間は、あるところまでで止まります。たとえばゴルフでも少し練習したら100は切れるかもしれないけれど、シングルプレーヤーにはなれない。本当に凝って凝って、やっとシングルプレーヤーになれる。われわれビジネスマンはシングルプレーヤー、プロですから、一流のビジネスマンになるには凝り性というのは大切です。ウチは凝り性かどうかというのを、採用基準に入れています。
批判的思考力よりも、僕にとっては状況把握力が重要ですね。状況把握力に対する問題解決能力と意思決定能力。問題解決するだけではなく、そこからヴィジョンまでつないでいくことが大事と思います。意思決定は冷静に評価して意思決定をするという能力そのものも大事ですが、その裏側で賛同を得る力というのも大事です。自分が意思決定をしても、誰も賛同してくれなかったらダメなので、その賛成を引き出す、みんなを巻き込む力です。巻き込む力なしに意思決定をしたら大変なことになる。裸の王様になっていて、誰もついてこない。だからこそ大事です。
そして、創造的思考力。イノベーションしていく力というのは、実は経営者にとっては一番大事ですべてのことに勝る能力かなと思います。イノベーションができない経営者はどれだけ素晴らしくても、結局引っ張っていけないと思います。