人生100年時代の新たな働き方の地平

コラム@IFLATsLAB

2010年代の10年間、政府は高齢国家としての持続可能な働き方と社会保障の戦略を練り上げることに多くの時間を使ってきました。

2010- 社会保障と税の一体改革
2013- アベノミクス三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略)
2013- 女性活躍の推進
2014- 地方創生
2015- アベノミクス新・三本の矢(GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロ)
2015- 一億総活躍社会の実現
2016- 働き方改革の推進
2017- 人生100年時代構想(人づくり革命)
2018- 全世代型社会保障

振り返ると毎年のようにキャッチ―な言葉が登場していますが、これらは別々の政策として捉えることなく、一気通底した政策体系として捉える必要があります。

米国CIAが公表する『THE WORLD FACTBOOK』によると、日本の中位数年齢は48.0歳で、米国は38.5歳、中国は38.4歳です。平成の30年間で65歳以上の就業者数は330万人から890万人に増え、就業者に占める65歳以上の割合は5.4%から13.2%に達しています。この間、就業者に占める35歳未満の割合は31.9%から25.1%に減少しています。

 

スタンフォード大学のエドワード・ラジアー(Edward Lazear)教授らの研究『Demographics and Entrepreneurship』によると、高齢化が進んでいる国は、そうでない国と比べて、すべての年齢層で起業家精神が低くなる可能性があります。起業家精神の発揚には若者ならではの身軽さ、柔軟性、エネルギーに加えて、経験に裏打ちされた「ビジネスアキュメン」(ビジネスの知恵、洞察力)が不可欠ですが、中高年者が多い国の若年者はマネジメントポジションに就く機会が限られるため、十分なビジネスアキュメンを獲得することができません。そして、中高年者の多くは昇進が遅れ、権限の小さなポジションに留まります。その結果、国としての人的資本の蓄積が阻害されてイノベーションに乏しい国になることを、同教授は指摘しています。

冒頭に列記したように、高齢化と人口減少が進むなか、政府は毎年違うフレーズを用いながら、労働参加率と労働生産性の向上に取り組んでいます。その成果は一定程度表れてはいますが、成長率は毎年1%を下回っており、世界との差は広がるばかりです。年齢構造と起業家精神の分析結果をもって経済成長や社会発展を語ることに異論はあるかもしれませんが、高齢国家の働き手である私たちは、「成長」や「イノベーション」という言葉に関心を持って、行動していかなければいけない状況に置かれています。

 

働きたいように働き、学びたいように学ぶ。

人生100年時代は、働き手が職場や社会をリードする時代である、と私は考えます。自分がどのように働きたいのか、どういう職場で働きたいのか、どんな社会を作りたいのか。そうしたことを制約なく考えて、みずから新しいチャレンジに取り組む働き手が増えることで、職場や社会に新しい価値がもたらされます。

誰もがいつでもチャレンジすることができ、チャンスのすそ野が広い社会。高齢国家の働き手である私たちの行動が、ウィズ&アフターコロナの未来を切り開きます。

間中 健介(IFLATs プロデューサー)

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この記事を書いた人 間中健介
IFLATsプロデューサー(外部)。
米系コンサルティング会社勤務、衆議院議員秘書、愛・地球博広報スタッフ等を経て、2007年から創薬支援ベンチャーの設立に参画。2013年関西学院大学非常勤講師、2014年内閣官房日本経済再生総合事務局スタッフ。2017年一般社団法人働き方改革コンソーシアム設立。東京・虎ノ門ヒルズにおいて「働き方改革実現会議2018」を主催。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。東京都立大学大学院出身。2014年度コープみらい地域かがやき賞受賞(小児がん患者の活躍支援)。
著作に「ソーシャル・イノベーション」(関西学院大学出版会/共著)、「Under40が日本の政治を変える」(オルタナ/コラム連載)。

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