エグゼクティブインタビューVol. 9-後編:アデコグループ 日本法人 取締役 土屋恵子 「自ら決断し、仲間と協動して未来をつくる」

人材の可能性と環境の整備

I: 土屋さんの座右の銘や、自分の中で決めていることやポリシーなどはお持ちですか?

T:座右の銘ではないですが、「全ての人に可能性がある」と常々思っています。すべての人が本当に素晴らしいものを持っていますし、一人一人の強みや個性があります。毎日のなかで、働く時間と家族や仲間といる時間、体を休める時間があるとすると、働くことに一日の3分の1をかけています。働くことで様々な人との出会いや成長があり、多様性の中で働くことを通じて一人一人が少しでも可能性にチャレンジして、花開かせられるといいなと思います。

I: 可能性を発揮できる環境づくりが組織の上の方の役割でもありますか?

T:はい。例えば新卒採用ですが、いまは企業に入る以外の選択をする方もたくさんいます。企業としては、選ばれる環境、選ばれる組織になることがすごく大事だと思うんです。ビジョンを示して、「この会社に入りたい」と思ってもらうこと。そして、ビジョン実現を一緒に進められるカルチャーを作っていくことだと思います。

アデコグループでは「ピープルファースト」「コレクティブスピリット」「グロースマインドセット」の3点を理念として打ち出しています。ピープルファーストは、会社のための人ではなく、その人の成長があって、そしてその結果として、ビジネスの成長があるということ。その根幹にある思いは、一人一人が社会や未来を変えることができ、少なくともそこに対して働きかける力を我々が持っているということです。失敗があってもそれはそれでいいのです。失敗から学び、成長するというグロースマインドセットや、お互いがみんなで一緒に信頼し、チャレンジするというコレクティブスピリット。同じ企業のビジョンのもとに集結したメンバーが、ある時期一緒に同じ方向に向かってチャレンジしていく企業体というものが、これからすごく重要になってくると思います。

I: 今後の新卒採用での基準などを教えてください。

T:われわれのビジョン実現を目指す道のりというのは舗装された高速道路ではなく、激しいでこぼこ道です。自分たちで泥だらけになりながら道を作って向かっていくものです。採用基準は、このチャレンジを楽しんでいただける方でしょうか。失敗も含めて、ゴールまで一緒に進んでいける方ですね。

 好奇心と感情コントロールスキルの必要性

I: IFLATsでは、人々が持つスキルを研究しています。特に基礎力としてのソーシャルスキル15項目(別ページ・リンク予定)に注目しています。15スキルの一覧の中で、どういったスキルがビジネスの中で重要か、今後これからの社会で生き抜いていくために、どのスキルがより必要になってくるかなど、ご意見をお聞かせください。

T:好奇心が”探求する力”に含まれるとすると、それはとても重要になってくるのではないでしょうか。変化の激しい時代だから、今の子供たちが将来就く職業は変わっていると言われますが、世代を超えて、新しいことや知らないことに対してどれだけオープンマインドであるか、今後ますます重要になる点のひとつです。

I: ちなみに、土屋さん自身は、どのスキルが一番備わっていると思いますか?

T: どれもすごく大事ですし難しいですね。付加価値創出に関わるスキルは、自分1人だけではなく、皆でと考えると、とても大事だと思います。「自己認識力」は、コミュニケーションやメンタルケアなど全てに関わりますね。年齢を重ねたり、あるポジションに長くいたり、組織の中で上に行けば行くほど、いろんな人の声に素直にオープンに耳を傾けられるか、特に現代において重要性を増しています。40〜50代の人は、すぐ下の世代に教えがちといったことを聞きますが、すぐ下というより、ひとつスキップしたもうひとつ下の世代をサポートし、彼ら・彼女たちの個性の発揮や成長を支えていくというような発想があると、大きな力になると思います。パッションを持ちつつ、なおかつオープンにいろんな人の声に耳を傾けるとことは、これからの時代、本当に大事だと思います。

(Vol.9-後編終了)

プロフィール

土屋恵子(つちや・けいこ):アデコグループの日本支社であるアデコ株式会社に2015年8月取締役 人事本部長として入社。現在、取締役 ピープルバリュー本部 本部長。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 人事本部 ヴァイスプレジデント、GEグループ会社の太平洋地域統括 執行役員 人事本部長などを含め、20年以上にわたり人事育成部門をリードした経験を持つ。ケース・ウエスタン・リザーブ大学経営大学院組織開発修士課程修了。

 

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