エグゼクティブインタビューVol. 9-後編:アデコグループ 日本法人 取締役 土屋恵子 「自ら決断し、仲間と協動して未来をつくる」
リーダーはいかにしてリーダーになったのか。
リーダー自身の言葉からその理由を紐解くインタビューシリーズのVol.6では、スイスに本社を置く人材派遣会社アデコ で取締役を務める土屋恵子氏に話を聞いた。前編では、HRに関わるきっかけとなったキャリア初期の頃から、欧米と日本企業の人材に関する考え方、また、コロナ禍において在宅勤務率98%達成に至るまでの社内改革など、働き方について考え続けてきた自身のキャリアを振り返ってもらった。後編では、大きな時代の変化に対峙する今こそ、何を中心に据え、どう考え実践していくか、最先端で陣頭指揮を採ってきた土屋氏にお聞かせいただいた。
社内変革のために必要なこと
I: コロナ禍でリモートワーク98%とは、とても高い在宅勤務の実施率ですね。
T: ITの責任者はサーバーが持つか当時すごく心配していたようですけど、そこに至るまでの色々な地道なアプローチのおかげで大きなトラブルもなく実現できました。「会社から信頼され、任されていると感じた」「この新しい働き方のおかげで、家族のそばにいながら、なおかつお客様や派遣スタッフ、求職者の皆さんにサービスを提供し続けることができた」と社員から聞いたときはとてもうれしかったです。以前から着実に進めてきたからこそ実現できたわけで、本当に良かったなと。
I: それだけ進めるためには、新しいことに取り組みやすい風土が会社に備わっていないと難しいはずですが、行動だけではなく、プラスアルファの施策が必要でしょうか?
T:ビジョンあるいは何らかの「あるべき姿」につながっていることが大事ですね。必ず会社全体を巻き込まなければと思います。一部の人だけがやるのでは、最初のスタートはいいのですが、それだけだと、サスティナブルな変化にならないですよね。会社全体で変革に向けた取り組みを進めることが大事です。チームや組織を、ビジョンに向かって一歩前に進めていく持続可能な変革になってもらいたいわけです。だからトップダウンで一時的に大々的にやっただけでは、必ず揺り戻しが来ます。それではもったいないですよね。組織横断で取り組むのと同時に、コアとなるビジネスの次世代のリーダーも複数名入っていた方が良いですね。
I: 働き方のプロジェクトを遂行されていたときは、土屋さんはリーダーとして関わっていらしたのですか?
T:そうですね。経営層のワークショップは、私が企画をしました。その後、経営層のコミットメントと支援のもとにクロスファンクショナル社員が集ってのチームがスタートしました。中心メンバーは7~8名でした。アデコグループでは、常に主体性を大事にし、オープンで、透明性のある議論をすることを大事にしています。言われたからやるのではなくて、自分たちで考えて取り組んでいこうと常々発信していますし、採用の時もそれを実行できる方を採用しています。自律的な人材になるためのトレーニングも提供しています。
I: 土屋さんが考えるリーダー像や、時代の変化に直面している日本の企業に求められるリーダー像とはどのようなものですか?
T:リーダーとは、「自ら決断し主体的に一歩踏み出して、仲間を信頼しながら未来を作っていける人」だと思います。日本企業には、大きな成功体験があるからこそ、なかなかそれから離れられないリーダーも多いと思いますが、いかにリーダー自らが変化を起こすというか、今までの地点から次へと踏み出していけるかだと思います。
I: 最近は若手や社員一人一人もリーダーシップを持たないといけないという論調もあります。それについては、どのように思いますか?
T: そもそも、全員リーダーシップを持っていると思います。しかも、リーダーシップをとれる未来を担う人材を採用しているのに、なぜ「まだ何も知らない若手」という扱いになってしまうのか。そうではなく、その人たちが伸び伸びとチャレンジできるようにするべきですよね。若手にリーダーシップがないとしたら、それは、若手社員が、その場ではリーダーシップを出さない方がいいと意識的にも無意識的にも学んでしまっているからです。