「目標設定、メタ認知、行動と量をこなす力」ZUU 冨田和成社長ー後編
成長を後押しする環境づくりとは
I:社員の方々も、本に基づいて理解していらっしゃるんですね。それを実践できるように、会社として、環境づくりはどのように注意していますか?
T:『鬼速PDCA』の考え方自体は、ミーティングの在り方など細かいところまで浸透させています。また、PDCAアカデミアという、私自身が開くリーダーシッププログラムもあります。私がコーチとなり、毎回8人程度メンバーを選抜し行う3ヶ月のプロジェクトです。曜日を決めて朝8時から9時までの1時間に開催します。内容は、PDCAやリーダーシップなど、経営層に入っていくための帝王学的なことをしっかり一緒に学ぶ機会を作っています。週に1〜2回は各部門の中期重点戦略をアップデートするミーティングを私を含めて開いており、各部門がそれぞれの経営課題や戦略をディスカッションする場になっています。その会には新卒メンバーも参加することが多いです。意思決定やどんなミーティングを開くかなど、戦略を考える場にどんどん同席してもらい、フローを見る機会が、環境づくりの一つになっていると思います。
I:新卒採用では、どのような点を重視していらっしゃいますか?
T:繰り返しにはなりますが、どこを目指しているか、現状をどう把握されているか、どれだけ量と言う視点で考えられるか。そしてもう一つあるのが、弊社の文化というか考え方に沿っている方なのかどうか、という点を大切にしています。
I:ZUUの社風や考え方というのは、具体的に表現するとどのようなことですか?
T:弊社は、「成長し続けるしか全てのステークホルダーが幸せになることはできない」と考えています。従業員も顧客も市場も株主も、全員が幸せになるには企業自体が成長し続けること。成長するから従業員はより大きな仕事を経験、またチャレンジでき、待遇なども上がり、会社のブランド・知名度が上がることで自分たちの自信にもなるし、周囲にも凄いと思われる、転職や起業後の人的資本の価値も大きくなる。また大きくなることで、ユーザーさんや顧客に提供できるサービスもより幅広く、深く磨き込み、更により多くの方々へ価値を届けることができる。それらの結果として業績が上がり株式価値も上昇し株主にもリターンが大きくなる。弊社の場合は全正社員にストック・オプション等の株式インセンティブが付与されているため、これは従業員へのリターンにも繋がっていきます。そこの考えが合うかどうか。弊社はこういった考えが一つ一つ特徴的な会社ではないかと思います。
人間一人一人willがありますし、大切にしていることがありますし、もちろん色々なタイプの企業が存在するわけです。根底にある考えや価値観、文化が合致していないと、その後の意思決定の場でも合わないことが出てくると思います。いくら顧客と株主がハッピーでも従業員がおざなりになっちゃうと絶対ダメなわけです。なので、ZUUに入社していただく方には、共に常に成長し続けることを是として欲しいと思っていますね。
I:IFLATsでは、リーダーシップに必要なスキルについて考えています。土台となるソーシャルスキル15項目上げていますが、冨田社長の理念やリーダーシップ論に欠かせないものはございますか?
T:量に関する話でいうと「継続力」ですね。発信し走り続けるためには、「継続力」と「自己回復力」と「ストレス、不安や緊張に対処する能力」は比較的連動している必要があります。確かにストレスフルなまま回復せずに継続しちゃう人もいるかもしれませんが、体を壊しちゃいますから。継続力とセットで他の二つが必要だと思います。先にお話ししたメタ認知は「自己認識力」ですね。また、目標設定力に関するスキルが、ここにはないでしょうかね? ゴールセットという言い方もありますが、高い目標を設定できるかどうか、というスキルも必要かと思います。
I:目標設定力を持つためには、何が必要でしょうか?
T:目指したいという思考は、論理ではないと思っています。論理的なことは「〜だからこうである」という演繹的なアプローチなので、自分の中で湧き上がるものとは何か、と考えてみる帰納的アプローチが合っていると思います。「気持ちが湧き上がった体験って何?」「自分はこう言う時にむちゃくちゃ燃えるんだよね」「あの頃って毎日バイタリティ溢れてたよね」といったことが、自分の目標を見出すためには効果的なのではないでしょうか。
(Vol.5-2 終了)
プロフィール
冨田和成(とみた・かずまさ):ZUU 代表取締役社長/1982年生まれ。一橋大学在学中に起業し、2006年に野村證券に就職。営業部門で好成績を収め本社のプライベートバンク部門などに勤務。2012年にIT×金融によるコンサルティング事業や富裕層向け金融情報サイトを運営する「ZUU」を設立。2018年には東証マザーズへ上場するなど大きな注目を集めている。『鬼速 PDCA』ほか著書も多数。健康維持は毎週末のランニング。今はオーディブルで最新テクノロジーの本を聞きながら、1キロを5分半で走る。気分転換を兼ねて好きな海が見える場所で仕事をしている。