「チェンジマネジメントという使命」ミツフジ 三寺歩社長 ー前編
明快な意思疎通とシンプルな決め事で組織の一員であることを意識させる
I:社員の方々の意思統一や目的共有をする秘訣は何かあるのですか?
M:誰が社会を良くするという結果を出すのか。何をアウトプットとしてあなたはやりたいですか、という点について明確な人が揃っているように思います。IPOや金銭的なことではなくて、達成したいことに対して人が集まっていると思います。我々は何をやるためにここに集まって、何のために存在しているのか。そんなに大きな会社ではないので、分からなかったら「どういうことですか」と聞いてきますからね。
I:コミュニケーションをとる方法は?
M:私自身の社外での講演内容は全て議事メモや動画で社内に共有しています。広報は社内と社外の両方に対応し、社長が言っていることを全社員が見られるようにしています。社員自身が目標管理で取り組んでいることと、社長が言っていることがつながっている状態になっていると思います。
I:会社組織としての取り決めはありますか?
M:社内ではコントロール可能な業務とアンコントローラブルな業務を分けています。技術は、できる部分もあればできない部分もある。スキル差もありますが、これに関しては一切細かいルールを作っておらず、個々人のKPI(Key Performance Indicators)にゆだねられています。自分がコントロールできるエリアに関しては、ルールが定められています。
知能高速道路を走りながら経営する時代
I:現在の状況で、必要なリーダーシップとはどういうものなのでしょうか?
M:タイプがあると思います。世の中を見通せるリーダーの方は稀有な存在だと思います。多くは学んで身に着けたことをまず最低限やれるようになること、その上で独創性をどれだけ加味できるかではないかと思います。
I:リーダーシップにおける知識と経験の比重について、社長はどうお考えになられますか?
M:将棋の世界でいえば、将棋という経験と技能の世界が、完全にナレッジに移り変わった。職人と言われてきた世界に、全てナレッジが入ってしまう。インターネットによって知能高速道路がひかれていくわけですよね。それが職人的な経験値と言われるものの価値をぐらつかせていくでしょう。私も経験でそこまで到達できたら素晴らしいとは思いますが、これからの時代は経験で全てを構築できたという方はほとんどいなくなるのではないでしょうか。完全に学んで、高速道路に乗って経営する時代だと思います。それでもたたき上げのユニークな経営者がいっぱい出てくるでしょう。
(Vol4-1終了)
プロフィール
三寺歩氏:2001年立命館大学経営学部卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック)入社。シスコシステムズ、SAPジャパン、ブルーコートシステムズなどを経て、2014年三ツ冨士繊維工業株式会社(現ミツフジ株式会社)入社、代表取締役に就任。